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身長と歯数についての関連性について
2018.06.22
歯科本日は、国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループが東京医科歯科大学と行った多目的コホート研究についてお話します。
多目的コホート研究(JPHC study)とは、国立がん研究センター 社会と健康研究センター予防研究グループ(津金昌一郎センター長)が、日本人の生活習慣と健康寿命を延ばすことを目的として、全国11か所の保健所、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などと共同研究を行い、様々な生活習慣とがん、脳卒中、心筋梗塞などの疾患との関連性について行う研究のことだそうです。1990年、秋田県の横手市保健所管内の40~59歳の男女約15000人の住人を対象として、生活習慣について多目的コホート研究を行うためのアンケート調査を実施しました。
2005年には、さらにコホート歯科研究を行うため、その男女15000人の中から、平均年齢65.5歳の男女1518人に対して、歯科医院を通じ、お口の健康についてのアンケート調査と歯周病の状態と残存する永久歯数の検診の協力を頂きました。
すると、大腸がんや乳がん、循環器系疾患と身長の間には関連性があると言われているように、身長が低いほど、歯科疾患に罹患するリスクが高いという結果が判明いたしました。これは、感染が起きやすい人において、炎症が慢性化することで、また、食生活が乱れたり、栄養状態が良くないことで、身長の成長に影響が生じるため、低身長ならびに、う蝕や歯周病という歯科疾患のリスクが高まると考えられているからなのだそうです。
このようなデータを踏まえ、身長と歯数との関連性を調べるため、1990年、多目的コホート研究のためのアンケート調査を実施した40~59歳の男女約15000人に中から、年齢、学歴、喫煙、飲酒、糖尿病、ストレス、BMI(ボディマス指数、別名 カウプ指数)、甘い菓子類や飲料水の摂食頻度、かかりつけ歯科医院の有無、口腔衛生状態、女性の出産回数など、結果を左右しかねない要因については、全て排除した上で、必要な条件を満たした男性565人、女性649人の合計1214人について、縦軸を残存する歯数、横軸を低い方から5群(図1)に分けた身長として、男女別の棒グラフに表記しました。(図2)
グラフから、女性においては、身長と残存歯数との間には関連性は認められなかったものの、男性では一番身長の高いQ5群4と比較して、一番身長の低いQ1では、前歯、奥歯それぞれ1本ずつ、合計2本が喪失している結果となりました。
また、ヒトの歯の数は親知らずを除いて24本になる訳ですが、男性の場合、自身の歯が喪失するリスクは特定できるような因果関係はないものの、やはり身長が低くなるほど、歯の喪失する数が多くなる傾向があるようです。
また、このグラフから明確な性差が認められましたが、女性の場合、妊娠や出産、女性特有のホルモンなどが関係している可能性や、男性より保健的な知識や行動力が高いことが要因として考えられるということのようです。
本日は男性特有の所見として身長と歯数との間には関連性があるという大変興味深いお話でした。