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歯胚の発生について

2025.03.05

歯科
皆様、こんにちは。
本日は「歯胚の発生について」というテーマでお話しします。正常な歯の芽にあたる「歯胚」の発生は位置情報、時間情報、様式(パターニング)として、顎骨内の決められた場所に一定の順序で、形態的・構造的特徴を備えながら進行しますが、この3つの特徴は正常な咬合状態、歯列の確立においても重要とされています。「歯胚」はエナメル質を形成するエナメル器の形態的特徴により、蕾状期、帽状期、鐘状期という3つの発生段階に分類されますので、それぞれについて解説致します。
1.蕾状期
乳歯の歯胚の発生は胎生6週に上顎突起、下顎突起の一部で口腔上皮(歯提)が活発に増殖や肥厚する事から始まります。上皮歯胚の外肺葉性間葉の誘導が、この口腔上皮の増殖や肥厚に不可欠になります。
歯胚の上皮性成分はエナメル器に分化して内側に陥没した馬蹄形構造の歯堤を形成します。
2.帽子状期
胎生8週となりますと、馬蹄形の歯胚に沿って上皮の陥入がさらに進行し結節状となり、その周囲に間葉組織が集積します。結節状の上皮細胞塊であったエナメル器は次第に大きくなり、周縁部が伸長して歯乳頭を内部に囲い込みます。この時期は陥入した上皮を帽子に見立てて、歯乳頭があたかも帽子をかぶっている様に見えるため帽状期と言われており、エナメル質形成に関与するエナメル器、歯髄や象牙質形成に関与する歯乳頭や歯周組織形成に関与する歯小嚢が分化する時期です。
3.鐘状期
さらに歯胚の増大とともにさらにエナメル器の周辺部は伸長して、歯乳頭を完全に包み込む様になります。この時期は口腔上皮から鐘が吊り下げられた様な形に見えるため鐘状期と言われています。エナメル器はその外表皮を覆う外エナメル上皮、ドーム状の内面覆う内エナメル上皮となって、これらの間を星状網が構成しています。鐘状期後期には石灰化が始まり内エナメル上皮と歯乳頭表面における細胞分化が進行します。内エナメル上皮は背の高い円柱状の前エナメル芽細胞を経てエナメル芽細胞へと分化し、エナメル質となります。一方、歯乳頭表層においても前象牙芽細胞が細胞突起を伸ばし始め、やがて象牙質となります。

尚、歯冠象牙質と象牙質を覆うエナメル質形成が完了しますと、歯冠形成期から歯根形成期に移行します。エナメル器は歯頚部形成が完了しても細胞増殖を継続しながら、内・外エナメル上皮だけから形成されるHertwig上皮鞘を形成します。このHertwig上皮鞘は将来の根尖方向に向かって伸長しながら歯乳頭に作用して歯根を形成する象牙芽細胞の分化を促します。
正常な歯胚の発生には、位置情報、時期情報、様式(パターニング)が整然と制御されている必要があり、これらの制御には数多くの種類の遺伝子機能が必要な上、複数の遺伝子間の相互作用も必須と考えられています。
ちなみに歯胚形成に関与する数多くの遺伝子のうち、永久歯の先天性欠如の原因と考えられている遺伝子については、非症候群性の先天性多数歯欠如の大家系を対象に行った遺伝子の解析結果から判明したものです。

本日は「歯胚の発生について」というテーマでお話ししました。

歯胚の発生について