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医師が提言する食の最新情報について
2018.07.24
未指定皆様、こんにちは。
健康の維持・増進、生活習慣病の改善には食生活が重要ですよね。
また、厚生労働省が行った「健康意識に関する調査」によると「かかりつけ医」からの健康に関する提言が一番信頼度が高かったそうです。
それを踏まえて本日は生活習慣の改善し健康長寿を図る「抗加齢医学」に精通している大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学森下竜一教授による最新「食」情報についてお話します。
食後の高血糖を避けるために、ご飯や甘いものなどの糖質を必要以上に摂取しないという「糖質制限」はダイエットの中でも一大ブームとなりました。
実はその「糖質制限」には、3つのタイプがあることをご存知でしょうか?
その1.1日の3食主食や間食の糖質をカットすることで、総エネルギー摂取量を減らし、血糖値を下げ体重や内臓脂肪を減らす「ガッチリ糖質制限」という方法は糖尿病患者さんに向いています。
その2.1日3食のうち夕食の主食を減らすか摂取しない、またはGI(グリセミック・インデックス)値の低い食品(図 シドニー大学「GI food advanced search」による)を摂取する「プチ糖質制限」という方法は血糖値が気になる方、生活習慣病を予防したいなど糖尿病予備群とされる方に向いています。
「ガッチリ糖質制限」ほど効果はないものの「おかずばかり多く食べられない」という人にも受け入れられやすく、継続しやすい方法です。
その3.脂肪をエネルギー源とするケトジェニック回路を活性化させ、体脂肪を燃焼させるという「ケトジェニック」という方法は、糖質のみ制限し、その他は好きなだけ摂取してよいとするもので、高脂質・高たんぱく質の食品を摂取し総エネルギー量を維持するものです。
また、内臓脂肪を減らしたい方、食後の高脂血症や脂肪肝の人には不向きです。
このように目的によって行う「糖質制限」は異なります。
「減量」が目的であれば「糖質制限」をしながら総エネルギー量を減らす方法が適しています。
「プチ糖質制限」でも1週間程度で「減量」効果を実感できるほど、「糖質制限」は比較的効果が表れやすいようですが、その反面、自己流の「糖質制限」により極端なエネルギー制限から体調不良を起こす場合もあるようです。
なお、糖尿病の患者さんが「糖質制限」を行う場合、治療薬を確認することも重要になります。
また、糖尿病患者さんが食後高血糖になるとインスリン抵抗性が高まり、高インスリン血症になり、脳内ではアルツハイマー病の原因であるアミロイドβの蓄積が進行する可能性もあります。
食後高血糖を改善する場合、「糖質制限」ではなく食事の順番を変えることで血糖値の上昇を穏やかにすることができます。
つまり、最初に野菜を食べるという「ベジタブル・ファースト」という方法で、何かを摂取してはいけなという制限はありません。
満腹中枢が働き始めるのは食べ始めから、約20分後と言われています。
早食いも血糖値の急激に上昇させる要因なるので、野菜を食べ始めてからある程度、間隔を置くことも重要です。
理想はメイン料理の後にご飯が出される会席料理で、1品ずつ時間をかけて食べるので、総量がさほど多くなくても、空腹が満たされる頃、ご飯となるので少ない量で済むという理由からだそうです。
血糖値のコントロールのみが目的であるなら、食べる順番やGI値の低い食品を意識すればよいのですが、減量を目的にするなら、カロリーも意識しなくてはなりません。
また食後高血糖になると冠動脈疾患と関連があるとされている食後高脂血症にもなりやすいと言われています。
食後高脂血症とは、食後の中性脂肪値が異常に高く、そのピークがずれて食前の数値まで戻らない状態です。
中性脂肪は食後6~8時間後に空腹時に戻るとされていますので、1日3食では数値が下がりきることはないので、1日2食として6時間以上の間隔を空ける工夫をしたり、夜遅くに食べないことも重要です。
食後高脂血症が引き起こす「脂肪肝」についてですが、検診で「脂肪肝」と診断される割合は男性で約30%、女性では20%と日本人は高く、その一部の方はNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、心筋梗塞、脳卒中、肝硬変、肝がんのリスクが高くなるようです。
脂肪肝の人は、脂質と糖質、アルコールを単独で摂取しても同時に摂取しないことが重要なようです。
食後高脂血症や脂肪肝も食事由来のコレステロールの影響が大きいので「ケトジェニック」による「糖質制限」は不向きで、例えば海鮮丼の場合、コレステロールの高いウニ、イクラ、イカ、タコ、エビは避け、赤身マグロの鉄火丼にしたり、おでんの場合、ちくわ、はんぺん、さつま揚げなどの練り物を避け、大根、こんにゃく、昆布を選んだり、先程の「ベジタブル・ファースト」が有効だそうです。
また昨年頃から「腸内フローラ(腸内細菌叢)」が話題になっていますが、ヒトの腸内には約1000種類、100兆個の腸内細菌が常在していると言われています。近年、「腸内フローラ」と様々な疾患との関連性が明らかになってきていて、肥満、糖尿病、アレルギー、喘息、自閉症などの腸管以外の疾患において、「腸内フローラ」の組成の偏りや多様性の減少が見られ、腸内環境を整えることが重要だと考えられています。
常在菌の中でも善玉菌は食物繊維を発酵させて、腸内細胞のエネルギー源となったり、代謝機能の制御にも関わっている短鎖脂肪酸を生成しますが、善玉菌「クリステンセネラエセ」は、この短鎖脂肪酸の生成能が高く体重増加を防ぐことから「痩せ菌」とも呼ばれていて、遺伝的体質と関連性があると考えられています。
日常の食事の補助食品として2015年4月に登場した「機能性表示食品」の認知度はだいぶ高くなり、これを上手に摂取することは大変有意義なことだそうですが、健康の維持・増進に活用できているところまでには至っていないようです。
「機能性表示食品」の代表格は「サプリメント」で、その種類は情報の記憶を助けるDHAを含む「サバの水煮」、血圧高めの方に効果的なGABAを含む「お米」、内臓脂肪を減少させる効果があるとされている酢酸を含む「リンゴ酢」、脂肪の吸収を抑え排出を増加させる難消化性デキストリンを含む「レモンスカッシュ」のような加工食品や、「みかん」「もやし」のような生鮮食品もあります。
食習慣が怖いのは、健康への影響が子供や孫にも及ぶことなのだそうで、医師の立場として、患者さんに栄養情報の理解を深めて頂くためのフォローが重要だということなのだそうです。
森下先生のお話は、大変、興味深い内容でした。私自身、生活習慣病に関わる年齢ですので、実は「ベジタブル・ファースト」や「プチ糖質制限」を日常に取り入れているのですが、何より食べること、特に甘い物系が大好きなので時々間違えて「スイーツ・ファースト」になってしまうこともありますが(笑)、大事なことは、毎日のことなので、無理せず、ストレスのないような方法を続けることではにでしょうか?さあ、今日は何をたべようかな?