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シェーグレン症候群を例に医科と歯科の連携の重要性について

2018.10.20

未指定

本日は「シェーグレン症候群」に対する歯科医師としての関わり方と医科との連携について長年、本疾患の治療に携わっておられる神奈川歯科大学大学院研究科顎顔面機能再建学講座岩淵博史先生のお話をします。

 

「シェーグレン症候群」は原因が不明であるため、根本的な治療法はなく、症状の緩和などの対症療法となるようで、2015年より指定難病とされており、1933年、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンが発表した論文にちなんで命名されました。

症状は目や口の乾燥(ドライアイ、ドライマウス)で、免疫システムに異常をきたし、自分の免疫細胞(リンパ球)が自分自身の正常な組織を攻撃するという自己免疫性疾患(膠原病)の一つとされています。

男女比は1:14と圧倒的に女性に多く、年齢問わず発症するようですが、閉経前後の50歳代がピークだそうですが、口の乾燥症状を疾患として認識していないため、水を飲むことで放置してしまっていることが要因で、初診年齢は60歳代と発症から10~15年のタイムラグがあるようです。

全身疾患の部分症状が口腔内に見られるため、早期発見・早期治療は歯科医師が担う機会が多いようです。

特に「口の渇き」(ドライマウス)に対する発見から乾燥症状の治療に関しては、歯科医師の役割は大きいと言えます。

図1にはドライアイやドライマウスのメカニズムを記載しましたが、ドライマウスつきましては、図2の緑色で示した症状が「渇き」より優先します。

その他、腺組織への攻撃による線症状として、鼻、喉、皮膚などの乾燥の他、腺外症状として、非リウマチ性の関節炎や寒冷刺激で指先が白くなるレイノー現象も現れます。

間質性肺炎など重篤な臓器障害が生じる場合もあるので、医師や歯科医師にとって、本疾患に対する理解が重要となります。(図3)

また単独で発症する「一次性(原発性)シェーグレン症候群」が7割を占め、残りは「関節リウマチ」「全身性エリテマトーデス」「強皮症」「多発性筋炎・皮膚筋炎」など、他の自己免疫疾患の合併症として発病する「二次性シェーグレン症候群」だそうです。

一次性の中には「シェーグレン症候群」特有の抗体価が非常に高いと二次性に移行する傾向があるようです。

診断基準は4つの検査項目において、他の疾患でも陽性を示す場合があるため、2項目以上が陽性であれば「シェーグレン症候群」と診断されます。(図4)

「シェーグレン症候群」の推定患者数は7万人とされていますが、4項目の検査をすべて行うケースは少なく、単独の診療科での確定診断ができないという背景から、潜在患者数を含めるとさらに増えると考えられています。

主訴が「口の渇き」である患者さんに対して、「シェーグレン症候群」か否かの鑑別診断で最初に確認するのは、ドライマウスか否かだそうで、ガムテストで、唾液の分泌量が基準値以下であればドライマウス(唾液分泌減少症)と診断するようです。(図4の②B

ちなみに唾液検査は非侵襲な上、簡便で安価なため継続的なスクリーニングに適しています。

また自覚症状を聞いた上で、舌を観察し特に所見が見られない場合もあるようですが、症状が進行するにつれ、ざらつきが生じ、重症になると舌乳頭が委縮して舌の表面が平坦になるようです。

また歯にう蝕が見られれば「シェーグレン症候群」を疑う一つの指標となります。

ドライマウスの原因が唾液腺の機能低下によるものかどうかの鑑別には、放射線同位元素を用いて調べる画像検査として唾液腺シンチグラフィーが有効だとされていますが、まずは他の乾燥症状があるか否か、しっかり問診することが重要なのだそうです。

「シェーグレン症候群」とは異なり唾液腺の機能低下を伴わない場合、降圧剤、精神安定剤、抗アレルギー薬などの服用、糖尿病や尿崩症などの循環体液量が減る疾患の罹患、口呼吸や冬に電気毛布を使用した就寝時の生活習慣などが考えられるようです。

歯科医師として本疾患に関わる意義は、第一発見者として診断の一部を担当し、主症状の口腔マネジメントを行うということになります。

具体的な口腔マネジメントとは、唾液の減少で発症しやすいう蝕や歯周病、口臭、義歯の不具合などについて予防することと、ドライマウスに対しては、保湿剤、うがい薬、唾液増加促進剤を処方し症状を緩和することだそうです。


「シェーグレン症候群」の他、口腔に全身疾患の病変が口腔に出現する疾患として、移植片対宿主病(GVHD)があります。

同種移植を受けた後、100日以降に見られることがある合併症の免疫反応で、最初に唾液の減少が見られるようです。

また、唾液の減少がきっかけとなり、口腔内や喉が乾燥することで、唾液の抗菌作用や粘膜保護作用が機能せず、ウイルスが体内に侵入しやすくなるため、風邪やインフルエンザ、さらに口腔常在菌が増加することで誤嚥性肺炎に罹りやすくなります。

胃食道逆流症においては、唾液が減少することで、逆流した胃酸の中和力が低下したり、荒れた粘膜の回復が遅れたりすることで症状が悪化するだけではなく、食道がんの要因となりかねないので、胸やけの有無を問診することが重要だそうです。

また、口腔と最も関わり合いが強い全身疾患として「糖尿病」が挙げられ、「糖尿病」の「第6の合併症」である「歯周病」とは関連性があります。

「歯周病」に罹患すると「糖尿病」に「糖尿病」に罹患すると「歯周病」になりやすいとされています。

「歯周病」を治療するとインスリンの作用が活発となり、血糖値をコントロールしやすくなるため、「糖尿病」で「歯周病」に罹患している患者さんの場合、早期の歯周治療と定期的な口腔ケアが重要になるということになります。


本日は岩淵博史 先生より「シェーグレン症候群」について大変、興味深いお話をさせて頂きましたが、地域包括ケアシステムの構築にあたり、自身の専門領域では対応できない疾患に対して、医科と歯科の連携強化が重要になるとういことが大変勉強になりました。




シェーグレン症候群を例に医科と歯科の連携の重要性について
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