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人類の進化と不正咬合の出現について

2018.12.25

歯科

日本初の矯正歯科学の臨床教育の場として1914年に開設され、100年以上の歴史と伝統がある東京歯科大学 歯科矯正学講座。

本日は人類の誕生の話を交えて、同講座の末石研二 教授による不正咬合の出現についてお話をします。

アフリカで人類が獲得した直立歩行と前頭葉の発達した結果、頭蓋底が前方回転するとともに、動物における口あるいはその周辺が前方へ突出した吻(くちさき)と呼ばれる部分(図1~3の赤丸部分)が消失し、顎骨は後退した上、火の使用するようになったため、咀嚼負荷が軽減した結果、歯列は縮小し、歯数の減少をもたらしたようです。

しかしながら、ネアンデルタール人や北京原人は大きな顎骨を持ち、叢生を示す個体は少なかったのは、固い肉と木の実を摂取するという原始的生活を送る過程で、強い淘汰が生じた結果、良い咀嚼機能と咬合を持ったものだけが生き残れたという証です。

また、閉鎖的環境の中でその集団固有の顔面形態と咬合関係が形成されていったようです。

その後、ホモ・サピエンス(現生人類)に分化すると狩猟生活から農耕へと大きな変革が生じ、集団社会の成立と食性が変化し、歯列や咬合に叢生という変化が生じたようです。

日本の場合、縄文人、弥生人が現生人類に属しますが、縄文人の場合、歯は小さく、咬耗により叢生はなく、成人においては鉗子状咬合(切端咬合、図4)が一般的であったようですが、弥生時代に入ると、北方系のモンゴロイドである弥生人の場合、縄文人よりも大きな歯を持ち、稲作をもたらしたことで、咬耗が減少し、鋏状咬合(図5)へと咬合様式は大きく変化したため、叢生が生じたということだそうです。

時代の変遷とともに、生存競争の大きな要因が咀嚼機能と咬合ではなくなり、多様な顔面骨格形態と咬合状態の存在をもたらしました。

1万年前になると、植物を栽培したり、動物を家畜化するという農耕革命などの進化により、人類は文明を築き、飛躍的な長寿と高度な知識を獲得できた反面、不正咬合をもたらしたとも言えるようです。

 

人類の誕生(図6~8)

人類は哺乳類の中で霊長類に属すが、その霊長類がしたのは、恐竜が絶滅する少し前の約6500万年前とされています。

その後、2500万~700万年前、類人猿に似た動物がアフリカやユーラシア大陸の広い範囲で、樹上生活し木の実などを食べていたようですが、約2500万年前、地球上で降雨量が減少したことで、森林減少が進み、地上生活を余儀なくされ、食物も木の実から草の実や根に変化しました。

600万~700万年前、チンパンジーの祖先から分化したとされる人類は、進化するにつれ、脳の容積が増加したため、火や多種多様な道具を使用したり、複雑な言語体系を操ることができるようになりました。

また、生存競争の大きな要素が咀嚼機能と咬合ではなくなったため、顔や犬歯は小さくなり、二足歩行という独自の進化を歩み始めました。

人類の進化の大筋はアフリカで約200万年前、猿人であるアウストラロピテクスから別属として分化した後、原人であるホモ・エレクトス、さらに旧人類(古代型新人)であるホモ・ネアンデルターレンシスへと分化した末、40万~25万年前に現生人類(現代型新人)としてホモ・サピエンスが誕生したようです。

【アウストラロピテクス】 図9

アフリカ東部、南部で出現した人類の先祖とされ、約400~150万年前に生存していた人類の進化の始まりとなる華奢型の猿人とされています。

頭蓋骨底部に脊椎がはまる大後頭孔があったことから、直立したチンパンジー似た二足歩行する初めての人類だそうです。

脳の容積は現生人類の約35%の500ml、身長も110~150cmとチンパンジー程度だったと言われています。

脳の容積、歯・顎骨の形態により、アフリカヌス、アファレンシス、ロブストス、ボイジイに分類されるそうです。

【ホモ・ハビリス】 図10

240万~140万年前に東アフリカに出現した後、アフリカ各地に進出した最初の猿人とされています。

アウストラロピテクスより大きい脳とされているが、容積は現生人類の1/2程度で、小さな臼歯を持ち、身長は135cmと小柄で、長い腕を持っていたようです。

石や動物の骨から道具を作り、狩猟生活を送っていたようですが、頭蓋後部の形態から、二足歩行による地上生活より、樹上生活に適していたと考えられています。

モ・エレクトスはホモ・ハビリスが分化したものと考えられていたが、2007年のネイチャー誌によると、50万年以上にわたり共存していたとされています。

【ホモ・エレクトス】

160~150万年前にアフリカ東部、南部で生活していたが、50万年前から一部を除いて、ユーラシア大陸各地に移動し7万年前まで生存していたようです。アフリカで生活を続けた一部のホモ・エレクトスはホモ・ハイデルベルゲンシスに分化し、その子孫が現生人類だとされています。ホモ・ハイデルベルゲンシスの一部はアフリカから、ヨーロッパ各地に移動し、旧人類(古代型新人)に属するホモ・ネアンデルターレンシスに分化したと考えられています。

脊椎がはまる頭蓋骨底部の大後頭孔の位置、しっかりとはまる膝関節により、直立二足歩行が可能だったということです。

ホモ・エレクトスの脳の容積は初期には750~800ml、後期になるとハビリスに比べ大きくなり現生人類の約75%程度の1100~1200mlになったようです。

歯は小さく、身長は140~160cmと現生人類よりかなり小柄で体重は50~60kgで頑丈型、華奢型の体形をした原人とされています。

また高度な技術を習得していたため、精巧な石器などの道具を作り狩猟生活を送っていたようです。また、火を使用していたようですが、当初、火おこしが困難だったため、火を共用する目的で、集団生活を送っていたようです。

しかし、火を使用が可能になったおかげで、暖が取れ、肉や根菜の調理が可能になり、寄生虫予防、細菌の感染減少により栄養価の向上につながった他、夜間活動が可能になり、獣や虫よけ効果にもなったようです。

インドネシアのジャワ島のジャワ原人(図11)や中国の北京原人(図12)はホモ・エレクトスに属しています。

ジャワ原人は約1万8千年前に生存し、コモド島の東、フローレス島で発見されたことでホモ・フロシエンシスと呼ばれ、孤島で起こる島嶼狭小化(とうしょきょうしょうか)現象により、身長は1m程度、頭部の大きさは現生人類の約1/3のグレープフルーツ程度の大きさだったようです。

図13では、A ホモ・フロシエンシス(380ml)、B ホモ・ネアンデルターレンシス(1500~1750ml)、C 現生人類(1350ml)について、頭蓋骨の大きさの比較写真を脳の容積(ml)を添えて示しております。

ちなみに、アジア圏で発見されたエレクトスに対して、非アジア種をホモ・エルガスターと呼んで区別するようです。

【ホモ・ネアンデルターレンシス】  図14 

ドイツはネアンデル谷(タール)で発見されたことが名前の由来だそうです。アフリカから、ヨーロッパに移動したホモ・ハイデルベルゲンシスの一部は、ホモ・ネアンデルターレンシスに分化したとされ、旧人類(古代型新人)に属するとされています。

10万~3万5千年前までヨーロッパから中近東にかけて狩猟を行い生活していたが、初期の現生人類(現代型新人)であるクロマニヨン人により滅亡させられたとされています。頑丈な骨格筋を持ち寒冷地に適した胴長短脚の体形で、男性の身長は165cm、体重は80~100kgを越えていたようです。

また前歯が大きく、下顎骨にはオトガイがなかったようですが、頭蓋骨は前後に長く上下につぶれ、発達した眼窩上隆起を持ち、上顔面は前方に突出し、鼻は幅が広くて高かったため、現世人類であるコーカソイドのような彫の深い顔つきだったようです。

脳の容積は現生人類の約1450mlより大きく、1400~1600ml、大きいものは1700mlもあったと言われています。

脳の容積に反して、思考力や行動力に関与する前頭葉の発達は悪く、喉の構造から、複雑な発生ができなかったことから、高度な言語体系は持ち合わせてはいなかったようですが、精度の高い道具を製作できたため、狩猟を行い火も使用しながら生活を送っていたようです。クロマニヨン人】 図15

4万~1万年前にヨーロッパや北アフリカで生活をしていた現代のコーカソイド人種、つまり白人(ヨーロッパ人)の祖先にあたる初期の現生人類に属しています。フランスはクロマニヨン洞穴で発見されたことが名前の由来だそうです。身長は180cm、体重は70kg、脳の容積は1590ml程度だったと言われています。かなり高度な石器製造技術を持っていたため、1万8千~1万5千万年前頃になると、投げやり、弓矢、骨角器による効率的な漁獲や狩猟生活を送りながら、洞窟壁画や彫刻など芸術的な一面を持っていたり、死者の埋葬や呪術を行っていたと言われています。


本日は人類の進化の過程を交えながら、末石先生の不正咬合の出現について、お話をさせて頂きました。人類の進化の過程を調べるにあたり、複雑な流れでしたので、記載内容に不備があるかとは思いますが、どうかご容赦頂けたらと思います。

そして、年明けまであとわずかでございます。皆様、よいお年をお迎えください。

































 

































人類の進化と不正咬合の出現について
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