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睡眠障害に対する歯科医師の役割について
2018.06.13
歯科よく耳にする睡眠時無呼吸症の原因は、歯並びや下の顎の大きさが関係しているということが分かっています。
歯科医師の立場で、睡眠障害に対する睡眠医療との関わり方について、本日は日本大学 歯学部 口腔外科学講座 口腔外科学分野睡眠歯科学 外木守雄先生のお話をさせて頂きます。
生活の多様化、高齢化、生活のリズムの乱れやストレスが原因とされる睡眠障害が糖尿病やうつ病などの発症リスクや死亡率に関係しており、具体的には睡眠時間が7~8時間であれば発症リスクは低く、それより短くなるにつれて高くなるという内容につきましては、以前「睡眠について」でも触れました。
その他、高血圧、高脂血症、心臓病、脳血管障害など様々な疾病の発症リスクを高めることでも知られています。
代表的な睡眠障害としては不眠症や睡眠時無呼吸症、周期性四肢運動障害などがあります。
その睡眠時無呼吸症の中の閉塞性睡眠時無呼吸症の場合、口腔内装置(OA)による歯科治療が保険適応となりました。
OAとは、お口にはめるマウスピースのことで下の顎を前の位置にずらす仕組みとなっており、気道閉塞を防止する効果が期待できる負担の少ない装置で手軽で有効な治療法であるメリットがある反面、患者さん一人一人の歯型に合わせて製作するため、専門的な診査、適応診断が必要になるデメリットもあります。
また睡眠障害を持つ患者さんの大半が、まずは呼吸器科や心療内科、耳鼻咽喉科などを受診し、医師から閉塞性睡眠時無呼吸症と診断されても、どこの歯科医院がOAを製作しているのか分からないのが現状です。
そのため、日本睡眠歯科学会では、主に一般開業医が認定医となっている認定医制度があります。
また、日本睡眠学会では、睡眠検査を実施する能力を必要とされる「睡眠医療認定歯科医」を認定しており、こちらは主に大学や病院に勤務する歯科医となっています。
また、OAを製作できる歯科医が閉塞性睡眠時無呼吸症の患者さんに対して、単独の判断では作製できず、医療保険を使って製作や治療を行えるようにするためには、医科に睡眠検査を依頼し、閉塞性睡眠時無呼吸症という確定診断を行って頂く必要があります。
OA作成後も、十分使用できるようになったことを確認の上、治療開始から3ヵ月後をめどに
医科で、睡眠検査を行い、装置装着後の効果検証を行うことが必要になっています。
このように治療に関しましては、医科と歯科で連携が不可欠となります。
また閉塞性睡眠時無呼吸の場合、その多くが肥満や小さい下の顎(小顎症)が原因で発症すると言われており、下の顎が正常に成長すれば発症リスクは減少すると考えられます。
特に咽頭扁桃の肥大(アデノイド)や下の顎が小さい小顎症が主な原因とされる小児の場合、ここ10年で急増していると言われていて、睡眠不足による成長障害、学業不振、攻撃的行動などが問題になっています。
また、小児の場合、OAは適応外となるため、一般の歯科医師が治療を行う機会は少ないかもしれませんが、特に小児歯科や矯正歯科では、発見する機会は多いと思いますし、小児の咬合不全の治療や下の顎の成長をコントロールすることで、閉塞性睡眠時無呼吸症の予防が期待できるかもしれません。
また、小児や大人に関わらず、閉塞性睡眠時無呼吸症では「いびき」をかきやすくなるため、診療時にいびきをかくかどうか?また診療中に寝てしまうような患者さんには夜、眠れているかどうか?聞いてみることも必要かもしれません。
近年、ニュースでも取り上げられているように「睡眠」に対する関心は高まっているようですが、口の中の全体に気を配り、全身管理かの観点から治療に関わっていくような歯科診療を実践していくことが必要で、その一つとして睡眠歯科医療というものがあり、睡眠医療に関する基本的な知識を身につけることが重要だということが分かり、大変興味深いお話でした。