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高齢者における歯数と睡眠時間、寿命、健康寿命、要介護期間の関係について
2019.01.21
歯科皆様こんにちは。
本日のテーマ「高齢者における歯数と睡眠時間、寿命、健康寿命、要介護期間の関係について」ですが、「高齢者における歯数と睡眠時間の関係」、「高齢者における歯数と寿命、健康寿命、要介護期間の関係」という2つのテーマの二本立てのお話となります。
周知の通り、睡眠時間は短過ぎても長過ぎても、死亡率が上昇すると言われていて、その他、循環器系の疾患、肥満など、健康に悪影響をもたらすということは多くの研究からも証明されていています。
歯と睡眠の関連性について言えば、歯は咬み合わせの元となる重要な体の一部ですから、歯が1本も無くなった高齢者の場合、下の顎が顎関節を中心に上方へ回転してしまい、気道に悪影響を及ぼし、睡眠時の呼吸を妨げる可能性があると考えられています。
そこで、東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授、小山史穂子先生が2054名の平均年齢73.7歳の高齢者を対象に「高齢者における歯数と睡眠時間との関係」について行った研究報告を1つ目のテーマとしてお話します。
調査した結果、残存歯数が0本の高齢者は、20本以上ある高齢者に対して、4時間以下という短時間の睡眠リスクが約1.4倍、その一方で10時間以上の長時間睡眠のリスクが約1.8倍と両極端になったということです。(図1)
同様に、残存歯数が1~9本の高齢者の場合でも、4時間以下という短時間の睡眠リスクが約1.3倍、10時間以上の長時間睡眠のリスクが約1.5倍という残存歯数が0本の高齢者と同様、両極端な睡眠時間のリスクが高い結果となったということです。(図2)
1つ目のテーマでは残存歯数が多いことが適切な睡眠時間の維持、さらには死亡率の低下に繋がるという内容でしたが、残存歯数が多いことは要介護にもなりにくく、健康寿命の延長に関わるという研究報告もあって、2つ目のテーマでは「高齢者における残存歯数と寿命、健康寿命、要介護期間の関係」について、同大学大学院 歯学研究科 松山祐輔先生が行った全国24自治体のうち、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を3年間追跡した研究報告についてお話をします。
調査した結果、最も違いが表れた85歳以上の中で、残存歯数が20本以上ある高齢者は、0本の高齢者に比べて、寿命については男性で57日、女性では15日、日常生活に制限のない健康寿命については男性で92日、女性では70日間、長くなったという一方で、要介護の期間については男性で35日、女性では55日間、短かくなったということです。(図3)
高齢化社会と言われるわが国で、より多くの歯の健康を維持することが、QOLの維持、適切な睡眠時間の維持さらには健康長寿に繋がるということ意味しています。
厚生労働省が発表した「2016年度 歯科疾患実態調査」によると「8020運動」の成果もあって80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が51.2%も占めたそうですが、相田先生、小山先生ならびに松山先生のお話は、歯の健康が健康寿命への第一歩という認識をもって日々の診療にあたることの重要さを改めて認識させて頂いた大変、興味深い内容でした。