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腸内細菌研究の最新レポート(後編)

2019.04.10

未指定

本日は後編として、前回に引き続き腸内細菌研究の最新レポートについてのお話をさせて頂きます。


食物の効果を左右する要因のもう一つは腸内細菌です。

腸内細菌や発酵食品中の微生物がCYPのような脂肪酸代謝に関わる酵素を発現し、代謝物を産生していることが最近の研究からわかったそうです。

発酵食品の代表格である納豆中の納豆菌はCYPを持つことから、納豆にEPAを添加すれば、17,18-EPETE(エポキシエイコサテトラエン酸)が作られる可能性があり、アレルギー抑制効果が期待できるということになる上、食生活には取り入れやすい組み合わせだと言えそうです。

また乳酸菌はリノール酸から血糖値改善、脂肪合成抑制、腸管バリアー保護などの作用を持つHYAという脂肪酸を産生します。

HYA量は個人差が非常に大きくHYA含有量の多かった3人の腸内細菌叢の菌種の組成は一致しているとは限らないという結果になったようです。

つまり、HYAという代謝産物という点では同じグループになるようですが、腸内細菌叢の組成だと別のグループに分類される被験者がいたそうです。

今後、腸内細菌の解析を行うにあたり、「門」や「属」などの系統分類にとらわれず、有用な酵素や代謝物などの菌の機能を重視すべきだということを意味しているのです。

なお、有用な腸内細菌を持っていても、餌となる食物を摂取しないと酵素やビタミン不足ということとなり、腸内細菌は活性が低下します。

将来、個別の腸内細菌叢に応じて食事指導するようになるようです(図4)。

 腸内細菌叢の型(エンテロタイプ)は肉食中心の場合、バクテロイデス型、炭水化物や野菜中心の場合、プレボテラ型、その中間的な雑食の場合、ルミノコッカス型に大別でき、平均的な比率は4対1対5になるそうです。

また、話題の「痩せ菌」についてですが、当研究所では日本人の腸内細菌の中から「痩せ菌」の探索と機能解析を進めていますが、BMIと相関のある腸内細菌の種類で調べると、BMIと逆相関する「痩せ菌」が確認できたようで、実験レベルでは、太った人の便をマウスに移植すると、餌を変えなくても太ることが分かっていることから、太りやすいと痩せやすいという体質については、腸内細菌により決まることが推測されるようです。

また薬効についてですが、例えば、抗がん剤の中にはCYPで代謝されるものも少なくなく、腸内細菌の中にはCYPの基質になるものがあるため、宿主である人間よりも先に抗がん剤を代謝してしまい、薬効をなくしてしまうこともあるようです。

抗がん剤に限らず、薬効を最大限に引きだすためには、投薬前に便を分析して、薬効に悪影響を与える可能性がある腸内細菌の有無が確認できれば、飲み薬ではなく、注射するなどの事前の対策が取れるとされています。

また、腸内細菌叢を調べ、有効なグループを絞り込んだ上で薬の研究開発を行えば、開発スピードも上がり、コストや薬価が抑えられることになるようです。

当研究所では、腸内細菌の情報から様々な指標として利用するための簡易検査キットをメーカーと共同開発中だそうで、基礎研究で明らかになった知見を応用して、健康な人が日常生活の中で、早期に腸内細菌叢の異変に気付けるようなシステムづくりの実現化に取り組んでいるそうです。



本日は、国澤純先生による腸内細菌研究の最前線のお話をさせて頂きましたが、当研究センターが開発中の簡易検査キットが一日でも早く商品化されることを切望したいと思います。




腸内細菌研究の最新レポート(後編)
腸内細菌研究の最新レポート(後編)