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わが国の癌の新規患者数の現状について

2019.05.07

未指定

皆様、こんにちは。

GWはいかがお過ごしでしたでしょうか?本日は、癌対策として「禁煙と検診」が重要であるということを海外のデータを交えて、わが国の癌患者数の現状についてお話します。

 

国立がん研究センターがん対策情報センター長若尾文彦先生がデータ管理する厚生労働省による2016年1月の「がんの部位別患者数の統計白書(表1)」によると、新たに癌という診断を受けた新規患者数は、男性56万7千人、女性42万8千人、合計99万5千人と過去最多を更新し、国民の2人に1人が発症、3人に1人が亡くなるという計算になるそうで、男性では2014年に4位だった「前立腺癌」が2位に上昇したそうです。

また、都道府県別の年齢構成の違いによる影響をなくし、10万人に対する新規患者数を地域別に調査したところ、北海道、青森県、秋田県などの北日本のほか、香川県、長崎県、宮崎県などの西日本で罹患率が高い傾向にあるというこれまでと同様の結果となったようです。

さらに、表2~4にあるような癌の部位別と地域性の関係についてですが、同研究センター全国がん登録室長松田智大先生によると、秋田県、山形県、新潟県、石川県、鳥取県、島根県などの日本海側の地域では胃癌が、山梨県の他、兵庫県、島根県、高知県、大分県などの西日本では肝臓癌が、北海道、京都府、奈良県では肺癌の罹患率が高い傾向にあるという結果になったようです。

ちなみに神奈川県が最も癌になりにくく、東京都では5年後の治療成績が良いという結果になったようですが、長野県と広島県では、癌の罹患率が高いにもかかわらず死亡率は低く、青森県では罹患率も死亡率も高いという結果になったようです。

 

 この新規患者数を世界保健機構(WHO)のデータを基に、日米間で2000年と比較した結果、10万人に対して、我が国では266人と15%の増加であったが、米国では日本より多い303人ではあるが7%減少する結果となったようです。

そのうち、日米における「肺癌」になった新規男性患者の割合を同じく日米間で比較すると、我が国では6%の増加であったが、米国では21%も減少する結果となったようです。

また、日米ともに新規女性患者数が最多の「乳癌」について、2013年までの20年間での死亡率を比較すると、わが国では33%の増加であったが、米国では36%も減少する結果となったようです。

さらに、表1からも分かるように、わが国での男女を合わせた新規患者数が最多とされる「大腸癌」について、同じく日米間で2013年での男性患者の死亡者数を比較すると、10万人に対して我が国では15人と増加の一途をたどっているが、米国では10人と年々減少する結果となったようです。

 

松田先生によると、日米間での男性肺癌患者の差については、世界保健機構(WHO)のデータを基に2016年における男性喫煙率の割合を日米間で比較した結果、わが国では34%であるのに対し、米国では25%と「禁煙対策の相違」によるものが大きいとしています。

また、乳癌の差についてですが、2015年の乳癌検診の受診率を比較すると、先進国の平均61%に対して、わが国では41%、米国では80%と、大腸癌同様、「低受診率による早期発見の遅延」によるところが大きいとしています。


青森県立中央病院 医療顧問 斎藤博先生によると、検診を通じて死亡率の低下などの効果を検証する体制が整備されている海外に対して、わが国では企業が実施する検診での受診率のデータを収集していないため、検診の効果が生かされていないことから、検診の質の向上とともに効果を検証できるシステムの構築を整備すべきとしています。


東京大学医学部付属病院放射線治療部門長中川恵一先生によると、癌は細胞の老化の一種であるため、高齢者の増加に比例する傾向にあるが、わが国の大腸癌の年間死亡者数が米国より多いのは、検便や内視鏡検査の受診率が低く、早期発見ができていないことが主な原因であることは前述したとおりです。

さらに、米国では早期発見による内視鏡切除術が普及しているため、深刻になる前段階で除去する一方で、わが国では遅延していることも要因としています。

また、学校教育の現場で「体育」が重要視され「保健」が疎かにされてきたということが影響し、医師による説明の理解度の割合をわが国とEU(欧州連合)8か国間平均で比較した場合、EU8か国平均が15%に対して、わが国では44%と高く、検診の重要性や保健への理解度を示す「ヘルスリテラシー」が調査対象国中で最下位だそうです。

そのため、「癌」に対する「早期発見」や「予防」の重要性を認知した上で、将来、癌死亡率を欧米並みの水準に低下させる取り組みとして、文部科学省は次期学習指導要領に「癌教育」を盛り込むそうです。

また、癌患者を具体的に減少させる取り組みとして、自治体主催の自由参加型の「がんセミナー」ではなく、大勢の人が働く企業に対して、厚生労働省が推進する「がん対策推進企業アクション」よりも、より強制力を持ったキャンペーンが必要であるとしています。

 

本日は、中川先生方のお話は、大変、興味深いお話でしたが、医療技術が進んでいるにもかかわらず、先進国の中で癌による死亡率が増え続けているのは、わが国だけであるという現実には正直、驚きました。


わが国の癌の新規患者数の現状について
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