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「ゲーム障害」について(後編)
2020.01.29
未指定皆様、こんにちは。
本日の「ゲーム障害について(後編)」では、国立病院機構久里浜医療センター「ネット依存治療専門外来」での実際の診療と中山秀紀先生が行っている普及活動についてお話します。
久里浜医療センター「ネット依存治療専門外来」は、精神科医による3人体制で、週3回、完全予約で診療にあたっているそうです。
長年にわたる依存症治療のノウハウを活かしながら、個々の患者さんに合わせたカウンセリング、デイケア(認知行動療法)、入院治療を行っている他、発達障害や精神疾患を伴っている患者さんに対しては、薬物療法を行っているそうです。また通院患者に対しては、バドミントンなどの運動も一例ですが、日中ネットのない環境で過ごして頂くデイケアとして、「NIP(New Identity Program)」と呼ばれるネットのようなバーチャルではない現実の世界での娯楽を見つけることを目的とした活動を行っているそうです。
アルコール依存症における断酒会同様、自分と同じ境遇であるネット依存、ゲーム依存の人の話を聞きながら、自身を見つめ直し、今後どうすべきかを考えるきっかけになっています。
中には外出を躊躇される患者さんもいるようですが、勇気を出して参加した人の中には、「ゲーム以外の活動も楽しい」「みんなで話して楽しい」などの意見があったり、バーチャルとは異なる現実の世界の良さに気付くなど大きな効果が出ているようです。
なお、引きこもりや暴言・暴力などの問題行動が深刻なケースでは、2か月程度の入院を勧めるそうで、ネットのない環境下で生活の立て直しを図るようですが、入院については依存症治療の原則にのっとり本人の同意が必要で強制はできないそうです。
しかし、入院生活を通じてゲームをやめた結果、離脱現象が表れるようですが、約1~2週間、長くても1か月で治まるようです。
ゲームの欲求がゼロにならなくても「ゲームをしなくてもまあいいか」と思えるようになれば良好な結果が得られたと判断してよいそうで、時々、ゲームをしたくなったという感情が湧いたとしても、強い衝動に駆られることは無くなるそうです。
また、このような「ゲーム障害」が急増している一方で各医療機関の対応は遅れているのが現状だそうで中山先生は開業している精神科や小児科の先生に対して、次のように話しています。
「ゲーム障害」が疑われる患者さんが来院した場合、発達障害やうつ病・不安障害などの精神疾患を合併しているかどうかを見極めた上で、もし合併している場合、合併している疾患を治療することで「ゲーム障害」が軽減されるケースも少なくないということを認識してほしいと話しています。
ゲームの利用時間を記録してもらい、生活指導を行うことから始め、カウンセリングなどを行いながら、効果が出やすい通院を続けながら、できればデイケアの参加を勧めるのが良いようです。
「ゲーム障害」と他の依存症との関連性はまだ解明されていませんが、臨床経験上、他の依存症と同じだと考えて良いようです。
例えばアルコール依存症の場合、ニコチン依存を合併することが多く、ギャンブルや違法薬物のアルコール依存症の危険性を高めるようです。
「ゲーム障害」を持つ未成年者が成人し、他の依存症を合併するのかどうかについての結論については
長期的な縦断研究の必要性があるようです。
依存症の場合、とりわけ予防が重要であることから、中学校に出向し、ネット依存・ゲーム依存を予防する啓発活動を通じて、依存症の怖さを伝えているそうです。
中山先生が行ったアンケート調査によると、中学一年生の約8割が日常的にゲームを行い、平日で1時間程度、休日ではもう少し長くなり、学年が上がるごとに長くなる傾向にあるそうです。
このような結果を通じて、中山先生は今後、スマートフォンが当たり前の時代の予防教育として、乳幼児を持つ親への介入が不可欠であり、10代はヒトとしての土台作りの重要な時期だけに、「ゲーム障害」への対応を社会全体での認識が必要だと考えているようです。
本日は、中山先生による大変、貴重なお話でした。
日々、多忙な診療を行う傍ら、予防に取り組むため、積極的な啓蒙活動を行っておられる中山先生の地道なご努力が今後、さらに増え続けるであろう「ゲーム障害」患者の減少に繋がってほしいと願うばかりです。