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不正咬合の要因である口腔習癖について

2020.12.23

歯科

本日は口腔習癖についてお話します。

歯科領域での多因子疾患として顎関節症や不正咬合が挙げられますが、不正咬合の発症要因として複数の疾患関連遺伝子に関わる遺伝的要因と環境的要因か相互作用が考えられています。

そんな不正咬合の原因の一つである口腔習癖は出生後に関わる後天的要因の中で局所的要因に分類されます。

 

口腔習癖により生み出される力が歯、歯列、歯槽骨、顎骨に作用することで顎顔面の正常発育を阻害し、様々な不正咬合を引き起こすとされています。

また、矯正治療の進行を妨げたり、予後が不良になることもありますので、矯正治療を行うにあたり、口腔習癖の適切な診断に基づく対応が必要とされています。

以下に典型的な口腔習癖とその口腔習癖に関連性があるとされている不正咬合について挙げてみました。

1.おしゃぶりの長期使用

哺乳時以外のおしゃぶりの長期使用により上顎歯列弓の狭窄、臼歯部交叉咬合の要因となります。

2.吸指癖(finger sucking

いわゆる「指しゃぶり」で人差し指、中指、薬指のうち2本を吸引する場合も見受けられますが、親指を吸引するケースが多いため特に母指吸引癖(thumb sucking)と呼ばれています。(図1)

前歯部開咬、上顎前歯部の唇側傾斜、下顎前歯部の舌側傾斜、上顎歯列弓の狭窄、臼歯部交叉咬合の要因となります。

3.弄唇癖

下唇を咬む咬唇癖(lip biting)(図2)や下唇を吸引する吸唇癖(lip sucking)があります。上顎前歯部の唇側傾斜、上顎前歯部の空隙、下顎前歯部の舌側傾斜、下顎前歯部の叢生の要因とされていますが、さらに長期的な持続により上顎前突症、下顎劣成長を招くと考えられています。

4.弄舌癖

無意識に舌を発音時、嚥下時以外に咬む咬舌癖(tongue biting)や舌を前に突き出す舌突出癖(tongue thrusting)があります。(図3)

前歯部開咬、上下顎前歯部の唇側傾斜、上下顎前歯部の空隙の要因とされています。

5.口呼吸

鼻中隔彎曲、咽頭扁桃の増殖肥大(アデノイド)(図4)、口蓋扁桃の増殖肥大により鼻呼吸が阻害されるため、口呼吸の要因とされています。

上顎歯列の狭窄、上顎前歯部の唇側傾斜の要因とされていますが、さらに長期的な持続により口唇閉鎖不全症、アデノイド顔貌と呼ばれる前顔面高の増大、下顎下縁平面の開大を伴う顔面形態になると考えられています。(図5)

6.異常嚥下癖

生後2~3歳まで上下の前歯間に舌尖を挟んだ嚥下様式である「幼児型嚥下」が行われていますが、乳歯列の完成とともにこの嚥下パターンが自然消滅し、「成熟型嚥下」に移行します。

「成熟型嚥下」とは下顎骨の挙上により上下の歯が咬合した状態で、舌尖が口蓋前方部に接触し、食塊を形成、その食塊を舌後方部へ送り込むという嚥下様式です。

何らかの理由で、「幼児型嚥下」が残存すると前歯部開咬、上下顎前歯部の唇側傾斜を招くと考えられています。

7.咬爪癖(nail biting

爪を咬んだり、咬み切ったりする癖で、長期的な持続により上下顎前歯部の唇側傾斜、歯の摩耗の要因とさ

れています。

咬爪癖の発現の要因の一つとして、心理的な要素も含まれる場合があるため、爪を切るという衛生指導に加

え心理面でのサポートも考慮する必要があります。

8.睡眠態癖

「うつ伏せ寝」などの睡眠中の習慣的姿勢が歯列だけではなく、顎顔面の成長発育に影響を与える場合が考えられる。

 

本日は歯科学生が学ぶ歯科矯正学の教科書であります歯科矯正学(第5版)より口腔習癖についてお話致しました。

不正咬合の要因である口腔習癖について
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