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嚥下機能の発達について
2021.01.22
歯科皆様、こんにちは。
今回は、消化器の始まりになる口における口腔機能は、「咀嚼機能」「嚥下機能」「発音機能」「呼吸機能」などありますが、今回は歯科矯正に関連性の高い機能の中から「嚥下機能」について「嚥下機能の発達について」と題して、お話をします。
口腔機能の発達は、出生直後から身体の成長発育を伴いながら、吸啜、嚥下、味覚、摂食、咀嚼ならびに発音機能という流れをたどります。
また、そのような機能は舌や咀嚼筋などの口腔周囲筋の神経筋機能の発達によって形成されるため、成長の時期によって様相も異なるようです。
出生直後の新生児は、「吸啜反射」により母乳を上手に吸うことができます。
「吸啜反射」は他の身体各部より早い段階で発達した自律神経反射で、子宮内で「指しゃぶり」しているという報告もあるようです。
乳児の吸啜、嚥下するパターンは、その後の成熟型のパターンとは様相が異なります。
乳児における「乳児型嚥下機構」の場合、特徴は舌を前に突き出し、舌は低位で舌背は凹んだ状態のまま、下顎を前方に移動させ口輪括約筋の活動とともに乳首を捕え吸啜し、吸啜から嚥下までの哺乳動作中、下顎は前後方向に「ピストン運動」しています。(図1)
一方、歯牙の萌出に伴い、食物が半固形物や固形物に変わる6~12か月頃になると、少しずつ成熟型の嚥下パターンに変化し、乳歯列完成とともに熟型嚥下が確立する。
その後の「成熟型嚥下機構」の場合、口輪筋の緊張は減少し、舌や下顎は前方へは突出せず、下顎挙上筋により下顎を上方に固定しながら、嚥下時は上下の歯は軽く接触しています。
舌は凹むことなく、高い位置で舌尖が口蓋前方で接触し、食塊を舌の前方から後方へ波状運動を行いながら、咽頭部へ送る。(図2)
また、歯の萌出後に「幼児型」の嚥下パターンが長く残存すると不正咬合を引き起こすと考えられています。
つまり「異常嚥下癖」と呼ばれる下顎の歯の間に舌を突出させたり、口唇を介入させたりする口腔習癖が「前歯部開咬」の要因になると考えられています。
また嚥下時は口腔内の陰圧を維持するために「開咬」の場合、舌の突出や口輪筋の緊張を伴うため、症状の悪化が懸念されます。
さらに「哺乳瓶哺育」の場合、「吸啜」に必要な筋活動が十分に獲得できず、「噛めない」という状態により「顎の発育不良」や「叢生」の原因と考えられている一方で、両社の「乳歯列形態」には大差がないという報告もある中で、「哺乳瓶哺育」は「乳房哺育」と比べて「吸指癖」の発生率が高いことは報告されています。
そのため、「哺乳瓶哺育」の場合、筋活動が十分発揮できるように哺乳瓶乳首の穴の大きさを調整するだけではなく、心理的背景や機能的背景に留意する必要があるようです。
「成熟型」による「摂食機能」「嚥下機能」は「乳児型」のような種々の原始反射に基づいて形成される反射的一体動作ではなく、関連器官の各種運動が、反復した経験により協調運動として統合されるという獲得される機能とされています。
「構音機能」の獲得過程と同様、この「摂食機能」「嚥下機能」の獲得については原始反射の消失とともに身体の
成長発育に関連した段階が存在していて、このような高度な機能の発達には適正な学習時期、つまり臨界期があり、「成熟型嚥下」の獲得は18か月ごろと考えられています。
その時期に何らかの障害が発生し、機能学習が阻害された場合でも、学習期内の発生であれば、障害要因の除去だけで機能学習は自然回復が期待できますが、学習期以降まで続くと、異常な「運動パターン」や「姿勢」が定着してしまうので、口腔筋機能療法 (MFT)により、異常な運動パターンによる感覚体験を抑制しながら、正常な感覚や姿勢、運動パターンを上位中枢で定着を図ります。
本日は前回お話した「不正咬合の要因である口腔習癖について」の一つ「異常嚥下癖」に関連して、嚥下機能の発達について、前回同様、歯科矯正学(第5版)からお話させて頂きました。