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骨格筋と健康寿命の関係について(前編)

2021.11.16

未指定
皆様こんにちは。
本日は「骨格筋と健康寿命の関係について(前編)」というテーマで、骨格筋の基礎研究を通して効果的なトレーニング方法を開発している順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科教授の町田修一先生による糖の取り込みなど筋肉の基礎知識ならびに患者様に対する運動指導に役立つ効果的なトレーニング方法について前編、後編に分けてお話します。

現代の便利な生活スタイルによりʻ動かないʼという状況が、メタボリックシンドロームを引き起こすばかりか、将来、高齢になりʻ動けなくなってしまったʼ状況になると、移動機能に支障をきたす「ロコモティブシンドローム(運動器症候群/ロコモ)」になります。
この「ロコモティブシンドローム(運動器症候群/ロコモ)」を予防するということは、平均寿命と健康寿命との差を短くし、いつまでも自分らしく活動し続ける生活を送ることに繋がるということになります。
健康のために筋肉を動かすことの重要性が知られてきたことも一因しているのか、昨今、筋トレへの関心が高まり、TVや雑誌などで目にする機会が増えています。
身体活動量が低いことが原因で、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなるなど脳との関係性も解明されてきています。
しかし、図1のとおり骨格筋の作用は体を動かすだけではなく、血液循環を補助するポンプ機能、体温調節、水分保持など多岐にわたっています。
また筋肉は、糖を取り込む最大の臓器でもあり、血糖のコントロールに大きな影響を及ぼします。
アスリートの場合、私たちと同じものを摂食しても筋肉を動かすことで、インスリンの助けがなくても糖の取り込みができるので、血糖値は上がりにくい体質になっています。
食料も今ほど豊富ではなく、体を使って仕事をした昔と比べ、飽食と運動不足という生活習慣の現代社会では、血糖値が上がりやすく糖尿病などの生活習慣病の引き金になってしまっています。
なお、血糖値を上昇させるホルモンはアドレナリン、グルカゴンなどの多糖類であるのに対して、血糖値を下降させるのは唯一インスリンなので、人類は進化上、血糖値が高くなりにくい生き物であることを証明しています。
若いうちは筋肉が維持しやすいものの、還暦を過ぎたあたりから急激に落ちていくと言われています。
筋肉は常時、たんぱく質の合成と分解を繰り返すのですが、筋肉自体が増減するメカニズムは未だ解明されていないようです。
「筋たんぱく質の合成と分解」という仮説によりますと、食後は筋肉の合成が進行し、空腹では分解が進行するというもので、1日を通して合成が高まると筋肉は肥大し、分解が高まれば筋肉は委縮すると考えられています。
また筋肉を増やすには食事だけではなく、物理的な刺激も必要で、動かなければ筋肉活動量が減り、分解が進みますので、青年でも寝たきりの状態であれば筋肉は落ちるということになります。
宇宙に滞在する宇宙飛行士のように無重力の環境下では、筋肉で体を鍛える必要がなくなり、寝たきりと同じ状態になってしまいますので、毎日2時間筋トレを行いながら筋肉の減少を予防しています。
つまり、筋肉を使わなくては健康を維持することができないということです。
図3のとおり骨格筋の「筋線維」は赤筋(遅筋)と白筋(速筋)に分類され、赤筋は疲れにくくて筋力が高いという特性を持ちます。
例えば、歩行時に使われる太腿の大腿四頭筋は赤筋(遅筋)と白筋(速筋)の比率は半々ですが、普段は主に赤筋を使っていますが、負荷がかかる大きな力を出す時や瞬発的な力を出す時だけ白筋を使います。
筋肉が加齢に伴い減少する中、とりわけ白筋が減少します。
通常の速度で歩いているだけでは、あまり疲れを感じないのは、赤筋を使う比率が高いためです。
言い換えるとウォーキングをするだけでは、筋肉量減少や筋力低下を予防する効果はあまり期待できないということになります。
白筋を使うためにはʻ少々きついʼと感じるぐらいの強い負荷をかけると良いということになりますので、スクワットのようなゆっくりとした運動が効果的とされています。
ʻ筋肉は裏切らないʼと言われるように筋肉はとても正直でʻ使っているʼʻ使っていないʼが顕著に現れるため、体に負荷がかからなければ、「筋肉を付けなくてもいい」と判断し、どんどん衰えていきます。
重いものを持ち上げるなど筋肉を使わなくては当然、筋肉は付かない訳ですが、移動に自分の足を使わない、重いものは持たない、椅子に座れば背もたれに寄りかかるなどのʻ動かないʼことが、現代のライフスタイルと言えます。
普段と同じことをしていたのでは、筋肉は付かない訳ですから、図4のように普段よりも強い負荷(過負荷)を掛ける動きを意識することが大切だということになります。
図5のとおり高齢になりますと筋肉は減る訳ですが、特に筋肉が減りやすい部位は腹筋と太腿の前側(大腿四頭筋)で、その影響は歩き方に表れ、具体的にはピッチ(歩調)ではなく、ストライド(歩幅)に変化が生じます。
図6のとおり腹筋の筋力が低下すると猫背になり正しい姿勢を維持できず、大腿四頭筋の筋力が低下すると、歩幅が小さくなり、歩行速度が遅くなるようですが、遅くなると、筋肉の活動量が低下し、筋肉を使わなくなるというʻ負のスパイラルʼになります。
また高齢者の余命は歩行速度から予測ができるようですが、厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」によると歩行速度が毎秒0.1m早くなると生存年数が約1年長くなるという予測が出ています。
このことから歩幅を維持して颯爽と歩くためにも、腹筋と大腿四頭筋を鍛えることが重要だということになります。
なお、筋肉を鍛えるタイミングには、年齢は関係ないということで、トレーニング機器を用いて、平均年齢90歳の高齢者が週3回、8週間の筋肉トレーニングを続けたところ、ほぼ全員の筋力が向上したという結果が出たということで、筋肉は何歳からでも鍛えられるということが証明されています。

本日は「骨格筋と健康寿命の関係について(前編)」というテーマで町田先生の大変、役に立つお話をさせて頂きました。現在メタボ予備軍と診断された自分に置き換えてみると、普段から骨格筋を鍛えることが、これから高齢になるにあたりQOLの向上につながるということが分かりました。後編では具体的なトレーニング方法などについてお話をします。


骨格筋と健康寿命の関係について(前編)
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