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骨格筋と健康寿命の関係について(後編)
2021.12.14
未指定皆様こんにちは。
本日は前編に引き続き「骨格筋と健康寿命の関係について(後編)」というテーマで、主に患者様に対する運動指導に役立つ効果的なトレーニング方法について、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科教授の町田修一先生のお話します。
順天堂大学では「ロコモティブシンドローム予防・改善のための健康・医療イノベーション」というプロジェクトに取り組んでおり、「寝たきりゼロ」を目指し、最終的には「いつまでも自分らしく歩行できること」を
目標にしているそうです。
そのための「ロコモティブシンドローム予防運動」は、トレーニング機器を使わず、自分の体重を利用して負荷をかけるような工夫を凝らし、いつどこでもお金を掛けずに手軽にできる方法です。
トレーニングメニューは腹筋と大腿四頭筋を鍛える方法を中心に9種類に分かれます。
図7のとおり4つの基本的なパターンから始め、徐々に種類を増やしていきます。
動いている間は、筋肉は活動しっぱなしなので、関節への負荷軽減のために「ゆっくりとした動作」で行うのがポイントだそうです。
最初は1セット10回前後、1セットごとに1分間の休憩をはさみながら1日3セット、週2回程度を目安としていますが、筋力や筋肉量には個人差があり、適切な負荷も異なるので、あくまで目安だそうです。
また2セット、3セットと増えるにつれ、筋肉は疲労し、きつくなるのは当然です。
3セット終了時に筋肉がプルプルし、ややきつい状態が個々の適正回数ですので、1セットを10回より多くしたり、少なくて構わないようです。
トレーニングを継続すると、同じ回数を行っても「ややきつい」と感じなくなるので、回数を増やすなどして、少しずつ負荷を増大させることがコツなのだそうです。
そのため、他人と同じことをするのではなく、「自分に合ったトレーニング」をすることが大切なのだそうです。
前編でも触れましたが筋肉の肥大・萎縮するメカニズムのもう一つの仮説が「筋肉の再生能力」によるものだそうです。
高齢者の怪我が治りにくいのは筋肉の再生能力の低下が原因と考えられていて、白筋が損傷しやすいのは白筋なので、加齢により白筋が減少することに合致します。
筋肉は使えば疲労しますが、筋肉が損傷する訳ではありません。
「ロコモティブシンドローム予防運動」の場合、筋肉痛(微細損傷)を起こさないように工夫されていて、筋肉痛が酷ければ、やり方を見直すとしています。
トレーニングは行うタイミングも重要で、空腹時は避けエネルギーが十分な状態で行う方が良いとされています。
エネルギーが不足している空腹の状態で運動を行うと筋肉は分解します。
またトレーニング後は、筋肉の回復を早めるため、たんぱく質を多く摂取するなど栄養補給も必要です。
筋肉量は60歳を過ぎた頃から年1%ずつ減少するとされていますが、「ロコモティブシンドローム予防運動」として3か月間、図7のトレーニングを実施したところ、参加者の筋肉量が10%増加したという結果が出ていて、言い換えると3か月間、筋肉トレーニングを行えば、10年も若返ることができるということを意味しています。
トレーニング効果の指標の一つでロコモティブシンドロームの評価法として「ロコモティブシンドローム度テスト」というものがあります。
下肢筋力を評価する「立ち上がりテスト」、歩幅を評価する「2ステップテスト」、体の状態や生活状況を評価する「ロコモ25」というアンケートがあります。
なお、ロコモティブシンドローム有病率を調べたデータであります「大規模コホート研究ROAD(Resarch on Osteoarthritis / osteoporosis Against Disability)」によれば、移動機能の低下が始まっている軽度のロコモティブシンドローム(ロコモ度1)の割合は60歳代が60%、70歳代では80%だそうです。
順天堂大学では、このプログラムの参加者における平均年齢は約72歳で40~50%がロコモ度1を占めますが、このトレーニングを行った後はロコモ度1から非ロコモへと効果が見られ、参加者からは、「階段の上り下りが楽になった」「立ち座りがスムーズになった」などの声も寄せられているようです。
しかし、筋肉が怠けていた期間が長ければ長いほど3か月では変化は見られないので、この3か月が始まりという認識を持ち、長い目で取り組むことが大切だそうです。
このプログラムを生活習慣の一部に取り入れ、習慣となれば理想的と言えます。
順天堂大学では、このプログラム機能を実装化させるために、インターネットを通じて全国の運動指導員に情報発信したり、トレーニング方法を解説したDVDを制作したり、啓蒙活動を行っていますが、将来的には、傍に指導員がいなくても、遠隔指導によりトレーニングが受けられるような仕組みも検討しているそうです。
個人個人、自分で自分の体を管理できるようになれば、健康な高齢者が増え、結果として国民の健康寿命が延びることに繋がります。
本日は「骨格筋と健康寿命の関係について(後編)」というテーマで町田先生のお話をさせて頂きました。60歳過ぎた頃から、筋肉が落ちるということでしたので、私も健康な高齢者でいられるよう、町田先生考案の4つのトレーニングメニューを生活習慣に取り入れていきたいと思いました。